表情 / 藍染+木版抜染 ×小山田将監(デザイナー・スタンプアーティスト)

スタンプと、藍染め。

スタンプアーティストの小山田将監氏がのれんを支持体としてスタンプの新たな表現を探求した作品[表情]。小山田将監氏はスタンプ軸とした創作活動を行うスタンプアーティストであり、オランダで活動の後、現在は熊本に拠点を移し活動をしている。小山田氏は対象や環境との対話のなかからスタンプの造形を考え、自身で材を削りスタンプをつくり出すスタイルで創作活動を行なっている。

 

藍染めは古来より庶民の暮らしの中で無くてはならないものであった。藍染めで紋を染め抜いたのれんが街並みに連なる光景は壮観であり、浮世絵にも江戸の原風景として多く描かれている。また、主にインドをはじめとしたアジア地域では木版を用いたブロックプリントで様々なテキスタイルを生み出しており、スタンプにも可能性を感じて共創に取り組み、スタンプとのれんの新たな表現をつくり出すことを目指した。※江戸時代の浮世絵に描かれる藍染めののれん。大てんま町木綿店/名所江戸百景 

TOKYOアーカイブより引用:https://archive.library.metro.tokyo.lg.jp/da/top

スタンプの引き算と、藍染めの足し算

スタンプは版画と異なり、それ自体で描くことも出来る道具、スタンプの持つ独自の表現を探求するなかで、今回の藍染とスタンプは、従来同じ図案を繰り返すのに対し、押すたびに異なる表情をつくりだすスタンプの特性を活かしたいと考えた。ミーティングで議論を重ね、スタンプの押印と浸し染めのタイミングをずらすことで、スタンプとしての表現は勿論、のれん全体としての視覚表現を目指すと言うことに目標が定まった。具体的には浸し染め抜染浸し染め抜染を繰り返すことで、ひとつのスタンプで藍の濃淡を表現するというものに挑戦し、染める順番、押印の強弱、抜染剤の量など様々な要素を調整した、幾度の試作の果てにようやくひとつののれんが仕上がった。

活き活きとした「表情」ののれん。

仕上がったのれんは藍色のなかでも階調豊かな藍色がひとつののれんのなかに込められた作品となった。風に揺られ、光を受けることでうつろうのれんは「表情」と名付け、小山田氏は「ふと生命の存在を感じる、森に入った時や、海に潜った時に感じる開放感の中で、包み込まれる様に現れてくる感覚は、遠い地の友や家族、霊的な存在を感じ、未来と過去の繋がりが現在ここへと現れる。生命は、多様な次元から繋がる象徴の中で、私というアイデンティティを認識するのではないか」と語る。従来は「紋」が主流のののれんだが、新たな表現としてスタンプ=印の可能性もこれからも探って行きたい。

小山田将監 (デザイナー・スタンプアーティスト )

2005年オランダでブランドデザインの会社でデザイナー、2010年よりフリーランス、2019年熊本へ移住、2022年デザイン会社「小山田家商會」をスタート。