silhouette / 昇華転写+顔料捺染 × ウミノ タカヒロ(グラフィックデザイナー)

光で、その表情を変えるのれん。

空間に掲げるというのれんの特徴を活かし、光が抜けると影の様な模様が浮き上がる[silhouette](シルエット)。本来、光を受けると影は消えるが[silhouette]は逆に模様が浮かぶ。この表現には透け感の強い麻風の素材と、光をあまり透過しない顔料との異なる遮光性を組み合わせることで表現した。デザインはグラフィックを軸としながら様々な領域のデザインを手掛けるウミノタカヒロ氏が手掛けた。ウミノ氏は平面的な紙メディアから、プロダクト・空間まで幅広い視点を持っており、広告メディア・インテリア・サインなどの複合的な機能を持つのれんのデザインを依頼した。※以下は箔や顔料をのせる工程の様子。

技法を起点とした共創。

此度の共創では技法を起点とし、その上でデザインを行なった。今回テーマとした技法は顔料捺染といい、バインダーという糊に顔料という不水溶性の色素を混ぜ、型などの上から摺り込む技法である。特徴としては、広範囲への着色を苦手だが、繊維に浸透せずに付着するため滲みがなく非常に細かな表現が可能であり、また日光への堅牢度が強く実用的な側面が強い。そして、顔料を付着させるボリュームによって素地との光の透過性に差異が出る。この様な特徴を踏まえ、ウミノ氏は緻密な線と透過性に起点を置いてデザインを考えた。

 

当初は図案をより分かりやすく視覚的に伝える為、黒地に白線でデザインを検討し、試作をおこなった。しかし、白線と地の黒とのコントラストが思うようにならなかった。検討を重ねた結果、黒線で表現することに方向転換をし、直接的に線は見えづらいが、より顔料の特性が分かるデザインへ舵を切った。

※以下は、最初に試みた白線のサンプル

 

光が抜けると、影模様が浮かび上がる。

黒線×黒地の仕上がりは成功し、素材特性を応用した従来にはない仕上りとなった。光が抜けないと一見無地ののれんであるが、光が抜けるとそこに影の様な柄が浮かび上がる。そして、放射状に伸びる図案は緻密な直線で構成されており、顔料捺染の強みがしっかりと活きている。「染め」とひと口に言っても、その特性は様々であり得意不得意もある。その、各々の強みを伝え、認知されることで、多様な染色技法の価値提案につながると考える。