BOTANICAL FRAME / ジャガード刺繍 × 小山唯香(グラフィックデザイナー・アートディレクター)

意匠の全てを、刺繍で表現したのれん。

窓辺にかかる植物標本をモチーフとしたのれん[BOTANICAL FRAME]。意匠すべてをジャガード刺繍で表現した。デザインのコンセプトは「窓のように景色と一緒に楽しめる暖簾」。のれんはタペストリーなどとは違い、空間へ掲出するという特徴を活かした立体的な刺繍ののれんを開発した。デザインはグラフィックデザイナー・アートディレクターの小山唯香氏。小山氏は兼ねてより刺繍への関心があり、共創が実現した。

 

今回採用した刺繍はジャガード刺繍というパンチデータ=刺繍用のデータをベースにした刺繍である。機械刺繍ではあるが、運針(針を運ぶ動き)のデータづくりや加工には熟練の技術・経験やセンスが求められる。従来、刺繍は意匠全体の中で、一部のハイライトとして用いられることの多いが、今回は意匠すべてを刺繍で表現することに挑戦した。

※以下は当初のラフスケッチ。

当初のデザインのラフ画。ベースの生地に窓を開けるというコンセプトが根底にあった。

どのようにして、「窓」をつくるか。

デザインのコンセプトを実現するには、刺繍の図案が宙に浮いている様な「窓」の表現が必要であった。また、掲出した際にも刺繍が弛んだりしない強度も求められた。先ずはどの様に窓を設けるかの検討を重ね、非常に透過性があり、また張りもあるチュール生地を支持に刺繍を行うことを試みた。試作を行うと、刺繍が宙に浮いている様な表現は十分に再現され、光明が見えた。その後、改良を重ねて刺繍をしたレース生地をベース生地に接合する難易度の高い加工にも成功し、デザインを高い確度で表現することができた。

刺繍のれんの挑戦と、可能性

完成したのれんは光が抜けると、図案が浮かび上がり優しく空間を飾る。染色とは違い物質的な刺繍の意匠は、落とす影も美しい。今回の協働は刺繍職人にとっても、非常に実りある挑戦となった。従来は呉服やアパレルなどの服飾への刺繍が主であった為、のれんなどのインテリアへの加工は稀であり、加えて刺繍だけで意匠を施すのは初めての経験であったが、様々な課題を乗り越えて完成した今回の協働の様に、今後ものれんや空間装飾としての刺繍の可能性に挑戦し、探求して行きたい。

小山唯香 (グラフィックデザイナー・アートディレクター)

2012年から大阪でパッケージデザイナー、2017年よりデザイン事務所goen°でデザイナーとして従事。2020年よりフリーランスとして活動を開始。